ピロリ菌検査

ピロリ菌について

ピロリ菌について

最近、ピロリ菌という言葉を耳にすることが多くなってきましたが、ピロリ菌がどんな菌であるかご存知ですか?ピロリ菌は1983年に発見され、正式名称をヘリコバクター・ピロリと言います。胃の中は強い酸性で「細菌が住めない」と思われていたため、最近まで発見されなかったのです。胃の中に好んで住みついて、胃の壁を傷つける細菌で、多くは子どもの頃に感染し、一度感染すると除菌しない限り胃の中に棲み続けると言われています。

ピロリ菌の感染が続くと慢性胃炎(ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎)が進み、この慢性胃炎が、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎、そして胃がんの原因となることが分かっており、WHOも世界の胃がんの8割はピロリ菌感染が原因であると報告しています。最近では、他の病気の原因にもピロリ菌がかかわっている可能性も指摘されています。

日本人のピロリ菌感染者数は約3,500万人といわれています。幼児期の胃の中は酸性が弱く、ピロリ菌が生きのびやすいため、ほとんどが5歳以下の幼児期に感染すると言われています。

上下水道の完備など生活環境が整備された現代日本では、生水を飲んでピロリ菌に感染することはありませんが、最近では母から子へなどの家庭内感染が疑われています。ピロリ菌に感染している大人から小さい子どもへの食べ物の口移しなどには注意が必要ですが、夫婦間や恋人間でのキス、またコップの回し飲みなどではピロリ菌は感染しないとされています。

ピロリ菌に関連する疾患の治療および予防のため、日本ヘリコバクター学会のガイドラインでは、ピロリ菌感染者のすべてに除菌療法を受けることを強く勧めています。

ほとんどのピロリ菌感染者は、症状もなく、健康に暮らしていますが、ピロリ菌を除菌することで、胃・十二指腸潰瘍のリスクが激減し、将来胃がんになる危険性が1/3になると言われており、次世代へのピロリ菌感染を予防できます。そのため、ピロリ菌の感染を検査し、感染していた場合は除菌治療を受けることのメリットは大きいと思います。

ピロリ菌の検査について

ピロリ菌感染の有無は、血液や便の検査、内視鏡による組織検査などで調べられます。ただし、症状のない方が感染の有無を調べたい場合、自費での検査となります。

内視鏡を使わない方法

手軽に受けることができる方法です。

  1. 尿素呼気試験
    呼気で診断する、精度の高い検査法です。試薬の服用前後の呼気を検査用の袋に吹き込み、その採取した呼気で診断するため、とても簡単な検査です。
  2. 血清・尿中抗体検査
    ピロリ菌に感染した抗体が血液中や尿中にあるかを調べる検査です。採血や採尿が必要です。
  3. 便中抗原検査
    便を採取し、H.pylori抗原を調べます。身体への負担がなく、特異度も高いです。

内視鏡を使う方法

胃炎や潰瘍などの病気があるかどうかを内視鏡で検査すると同時に、胃粘膜を採取してピロリ菌感染を調べる方法です。

  1. 迅速ウレアーゼ試験
    ピロリ菌はウレアーゼという酵素を持っているため、その活性を利用して調べます。内視鏡検査時に採取した粘膜を専用の反応液につけ、色の変化でピロリ菌の有無を調べます。
  2. 鏡検法
    粘膜に特殊な染色を施したのちに、顕微鏡で感染がないかを診断します。
  3. 培養法
    採取した胃粘膜を磨りつぶし、ピロリ菌の発育環境で培養し、その後、判定します。

ピロリ菌の除菌について

ピロリ菌の感染が判明した場合、現在は除菌治療が保険適用になっています。除菌治療では、3種類の内服薬を組み合わせて、1週間内服します。1回目の除菌(1次除菌)の成功率は約7割とされており、1次除菌が不成功に終わっても、別の薬剤を用いた2回目の除菌(2次除菌)まで保険適用が認められています。

2次除菌を含めた成功率は約98%程度とされているため、ほとんどの方が2次除菌までで除菌できると言えます。また、一度除菌に成功したら、再感染の可能性はほとんどありません。

胃がんリスクの検査(ABC検査)

胃がんは怖い病気の一つですが、早期発見できれば比較的楽に治せる時代になりました。しかしながら、症状もないのに内視鏡を受けることには抵抗がある方も多いと思います。そこで、そうした方にはABC検診で胃がんのリスクを評価した上で、内視鏡検査を受けるべきか決めていただく方法をお勧めしています。

“胃がんリスク検診(ABC検診)”は、胃がんにかかるリスクを判定し、AからDに分類する検査です。この検査では、人の胃の中に生息するヘリコバクター・ピロリの感染の有無と、ペプシノゲン判定による胃粘膜の萎縮度を血液検査で調べます。

これは、胃がんそのものを見つける検査ではなく、あくまでもリスクを調べる検査です。判定がBからDの方には、内視鏡による精密検査、除菌治療や必要な治療、経過観察によって、胃がんなどの予防・早期発見・早期治療につなげます。

「ABC検診」のメリット

※胃がんになりやすいかどうかのリスクを評価できる
※今後受ける検査やその頻度の目安が分かり、胃がんの予防につながる
※放射線を使用した検査ではないので、被爆の心配がない(内視鏡検査も放射線を使わず、被爆の心配がない検査です)

ピロリ菌感染 ペプシノゲン判定 胃がんの発生リスク 検査間隔の目安
(-) (-) A:非常に低い(ほぼ0) 5年に1回
血液でペプシノゲン検査
(+) (-) B:やや高い(1000人に1人) 内視鏡検査を3年毎
(+) (+) C:高い(400人に1人) 内視鏡検査を2年毎
(-) (+) D:非常に高い(80人に1人) 内視鏡を毎年
Aタイプ

健康的な胃粘膜です。そのため、胃の病気になる危険性は低いと考えられますが、逆流性食道炎には注意する必要があります。

Bタイプ

少し弱った胃だと言えます。胃潰瘍・十二指腸潰瘍などにかかる危険性があり、胃がんが発生する可能性もあります。

Cタイプ

慢性萎縮性胃炎の可能性が高く、胃がんなどの病気などになりやすいタイプです。内視鏡などの精密検査が必要であり、胃の病気の早期発見・早期治療に努める必要があります。

Dタイプ

かなり弱った胃粘膜です。Cタイプと同様、胃がんを発症するリスクが高く、毎年、内視鏡検査を受ける必要があります。

※以下の事項に該当する場合、ABC検診を受けることができません。

  1. 過去に胃がんリスク検診(ABC検診)を受けたことがある
  2. ピロリ菌の除菌治療を過去に受けたことがある
  3. 食道・胃・十二指腸に関する疾患の経過観察中、あるいは治療中
  4. 胃を切除している
  5. 胃がんの手術を受けたことがある
  6. 胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬を2ヶ月以内に服用したことがある
  7. クレアチニン3.0ミリグラム/デシリットル以上であり、腎不全または腎機能障害がある

ABC検診の受診費用は3,800円(消費税別)です。ただし、ペプシノゲン検査のみの場合は3,000円(消費税別)です。  

オフィシャル痔の専門サイト