胃カメラでわかる病気

胃がん

日本は先進国の中でもピロリ菌感染者の多く、世界で最も胃がんの多い国として有名でした。胃がん検診、内視鏡検査の普及、早期治療により、90年代から胃がんによる死亡率は著明に減少しています。

そして、現在ではピロリ菌と胃がんとの関連性が確認されたことによって、ピロリ菌の除菌治療が広く行われるようになれば、胃がんは更に減少すると予想されています。

胃がんは他の消化器疾患と似た症状が多く、特有の症状はありません。そして、早期胃がんではほとんどが無症状で経過し、進行がんまで進展して初めて症状が出ることが多くなっています。

進行した際に出てくる症状は上腹部痛(心窩部痛)、食思不振、腹部膨満感などがあり、さらに病気が進むと体重減少や吐血、下血(黒色便)が出現し、貧血が起こります。

ピロリ菌以外に胃がんの発症に影響を及ぼすものには、過食、塩分の高い食事、喫煙などがあり、こうしたものを避け、果物、野菜の摂取や適度の運動を心がけることは、他の悪性腫瘍の予防にもなります。

食道がん

60歳代、70歳代の男性によく見られ、特に長期間の飲酒歴や喫煙歴がある方に多くなっています。早期にはほとんど症状がなく、進行してくると、食べ物のつかえ感、背部痛、体重減少などが起こります。胃がん同様、無症状のうちに発見することが重要ながんです。

無症状の時期の早期発見には、年1-2回程度の定期検診が不可欠です。こうした検診で発見された早期がんの場合、内視鏡での切除が可能ですし、ほとんどが完治します。喫煙や飲酒などの習慣がある方はリスクが高いと言えますので、定期的な内視鏡検査を受けることをお勧めします。

十二指腸がん

十二指腸がんは消化管に発生するがんの中ではまれなことから、原因に関してはいまだ不明であることが多くなっています。ほとんどは良性腫瘍の腺腫からがんになると考えられています。

遺伝性の疾患である家族性大腸腺腫症の場合、十二指腸ポリープと十二指腸がんが高い頻度で発生することがわかっています。診断は、内視鏡検査時に組織を採取して病理診断を行い、確定します。

早期には症状がほとんどなく、進行がんになると腹痛や吐き気、嘔吐、体重減少、貧血などの症状が現れます。さらに進行してがんが胆汁の出口を塞いで黄疸が起こることもあります。

ヘリコバクター・ピロリ菌

胃内視鏡検査で胃潰瘍、十二指腸潰瘍が発見されたり、萎縮性胃炎(慢性胃炎)が見つかった場合、その原因はピロリ菌の可能性があります。内視鏡検査時に、ピロリ菌が胃にいるのかを調べることができますが、これは粘膜の採取によってチェックする方法です。

それ以外に、採血してピロリ菌の抗体をチェックする方法もあります。患者さんにとってどの方法がよいか、内視鏡検査時に医師が観察の上、判断しています。

ピロリ菌の存在が確認された場合には、朝夕一日2回の内服を1週間続ける抗菌薬と胃薬の内服でピロリ菌を除菌できます。ピロリ菌の除菌を受けると、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発を約90%も抑えられる事がわかっていますし、ピロリ菌による慢性胃炎を放置すると胃がんになる可能性が高まってしまいます。

胃がんの9割以上はピロリ菌が関係していますので、ピロリ菌の除菌は胃炎の進行を防ぐだけでなく、胃がんになるリスクを減少させます。胃炎が進行する前の早い段階で胃内視鏡検査を受けて、ピロリ菌感染が認められたら除菌することをお勧めいたします。

胃潰瘍

食後1時間くらいに起こるみぞおちの痛みという症状が、2/3以上の方に認められることが大きな特徴であり、他に腹部膨満感、胸焼け、ゲップなどの症状が起こる場合もあります。

原因にはピロリ菌感染が大きく関わっています。潰瘍患者のピロリ菌感染率は70%以上にもなりますので、ピロリ菌除菌を強くお勧めしています。他には、非ステロイド系抗炎症薬の鎮痛薬であるNSAIDsや喫煙が原因となることがあります。

H2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害剤など、胃酸分泌を抑制する薬で潰瘍は消失しますが、中止すると高率に再発しますので、こうした薬の服用だけの治療はお勧めできません。
ピロリ菌除菌に成功した場合、胃潰瘍、十二指腸潰瘍ともに再発率が明らかに減少しますので、除菌治療は胃潰瘍治療に有効です。

十二指腸潰瘍

20~40歳の若年層に多い病気で、原因は、97%以上がピロリ菌感染によるものとされています。胃に比べて十二指腸の壁は薄く、その分深く進行し、出血や穿孔を起こしやすい傾向があり、空腹時の痛みが特徴的で、胃ではなく背部痛が起こることもあります。胃潰瘍とほぼ同様の治療を行います。

胃炎

胃炎には急性と慢性があり、急性胃炎の場合は、上腹部痛、吐き気、胸焼けといった症状が急に起こります。原因は鎮痛薬、アルコールやストレスなどであり、数日間胃薬を服用することでほとんどの症状が改善します。

慢性胃炎は胃もたれ感や鈍痛、上腹部膨満感といった症状がある場合と、無症状のことがあり、無症状の慢性胃炎は胃内視鏡検査で見つかることがあります。ほとんどの場合はピロリ菌がかかわっており、女性に多い鳥肌胃炎の場合、高率にがん化しますので、特にピロリ菌除菌が重要になります。

慢性胃炎の原因には、ピロリ菌感染の他に、加齢、塩分の過剰摂取、飲酒や喫煙習慣、野菜の摂取不足など、多くのものがかかわっているとされています。

また、萎縮性胃炎は、胃粘膜が非常に薄くなり、胃炎と同様の症状を起こしますが、これもほとんどの原因はピロリ菌感染だとされています。萎縮性胃炎が発見された場合、ピロリ菌除菌治療はその後の胃がん予防につながります。

萎縮性胃炎はこれまで加齢による現象だとされていましたが、ピロリ菌感染者のみが萎縮性胃炎になること、除菌でそのリスクが改善することが分かってきています。

ピロリ菌に感染するとまず急性胃炎となり、その後、長い年月をかけて萎縮性胃炎となっていきます。そして、その間に胃がんになるリスクが4~10倍に増加するとされていますので、除菌治療は有効です。

胃ポリープ

胃ポリープには、胃底腺ポリープと過形成性ポリープ、胃腺腫があり、その大部分は胃底腺ポリープです。この胃底腺ポリープはピロリ菌に感染していない方に多く見られる胃底腺の過形成です。女性に多い胃ポリープで、粘膜の炎症所見もなく、がん化も見られませんし、胃底腺の粘膜は萎縮せず、状態も良好です。バリウム検査で見つかることが多いのもこのタイプのポリープです。

過形成性ポリープは頻度こそ2%と低いのですが、粘膜に強い炎症が現れることが特徴で、炎症性ポリープの所見を呈して自然には消失せず、1.3~3%ががん化するとされています。過形成性ポリープはピロリ菌の除去で縮小、消失することがあり、関連性が強いと考えられています。

胃腺腫は、高齢な男性に多く、男女比は4:1となっています。高齢者で腸上皮下性を持っており、かなり萎縮した粘膜に見られるケースが多く、2cm以上になるとがん化する確率が高くなりますので、内視鏡で切除する治療をお勧めしています。

胃アニサキス

アニサキスは寄生虫で、成虫はクジラなどに寄生しますが、幼虫はオキアミを経てサバ、アジ、イワシ、イカなど様々な魚に寄生し、感染幼虫になり、こうした魚を生で食べることで感染します。

人の体内に入ったアニサキスの幼虫は成虫にはなりませんが、胃や腸で膿瘍を形成し、好酸球性肉芽種という病変を起こします。アニサキスが寄生すると、白血球のひとつである好酸球が寄生虫の感染に対する防御機構として働き、虫の穿入部周囲にこの好酸球が浸潤することが原因となります。

加熱したものであれば安全ですが、マイナス20度以下で24時間以上冷凍することでもアニサキスの幼虫は死滅します。症状が起こるのは、刺身などの生魚を食べた6~9時間後です。ここで起こる嘔吐や腹痛といった症状はそのうち治まります。

ただし、10日ほど経過すると、胃壁や腸壁に好酸球性肉芽種が形成され、消化管の壁に穴が開き、激痛を生じて重症になってしまうことがありますので、最初の症状があった時に受診することをお勧めします。

治療は内視鏡を使った虫体の除去になります。内視鏡であれば胃や腸内のアニサキスや好酸球性肉芽種の有無を直接調べ、虫体をその場で摘出できます。この治療で虫体を除去することで、2ヵ月程度かかりますが肉芽種は自然に治っていきます。

逆流性食道炎

食道は胃と違い、強い酸性の胃液から粘膜を守る機能がないため、胃液などが食道へ逆流して繰り返し酸にさらされると炎症を起こし、粘膜がただれてしまいます。これがひどくなると潰瘍になってしまうこともあります。

症状としては胸やけや酢っぱいものが上がってくることが代表的なものですが、他の症状が現れる場合もあります。胃もたれやおなかの張り、ゲップがよく出るなど胃の病気と似た症状や、喉の違和感、咳が続くなど気管支の病気のような症状が現れることもあります。

逆流性食道炎は胃内視鏡検査での診断が基本ですが、症状だけがあって内視鏡では所見が見られない場合もあります。これを非びらん性胃食道逆流症(NERD)と言います。以前は異常がないと言われ、治療対象とはなっていませんでしたが、現在では内臓の知覚過敏が関係していると言われており、日本人に多いタイプでもあります。

治療は、酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬やヒスタミン拮抗薬の服用とともに、生活習慣の改善も効果的です。

食事の際には、一度に沢山食べない、脂っぽいもの・甘いものを控えることを心がけ、食べてすぐに寝ないようにします。そして普段は、腹部をしめつける服装は避け、眠る際には上体を高くすると症状緩和に役立ちます

機能性胃腸症

機能性胃腸症(ディスペプシア)(FD:functional dyspepsia)は、症状があるのにも関わらず、器質的疾患がなく、胃の働きが不良であることが原因になっているものです。症状には、胃もたれ、みぞおちの痛み、みぞおちの灼熱感、すぐお腹がいっぱいになってしまう早期飽満感、食欲不振、悪心、嘔吐などがあります。

日本人の10~20%に機能性胃腸症がみられると報告されているように、よくある病気ですが気付かないまま、または原因不明で放置してしまうケースが多くなっています。この機能性胃腸症は、治療することで症状が改善できる病気です。

そして症状が改善したら、食事を味わいながら楽しめる快適な日常生活を送ることができるため、治療を受けないことはとてももったいないことだと考えています。現在はこの疾患に適応のある薬も使われています。内視鏡で観察しても病変がないからとされてしまったけれど症状にお悩みの場合は、ぜひご相談ください。

この機能性胃腸症も、先に述べた非びらん胃食道逆流症も内視鏡検査では診断できません。更に、この2つの疾患は合併していることも多いと言われています。治療は、その方の症状に合わせて数種類の内服薬を組み合わせることで行います。

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